評価額8000億円!AI開発の盲点「コードを書いた後」の課題とは?

先日、米国のDevOpsプラットフォーム企業Harnessが巨額の資金調達を発表し、大きな話題を呼んでいます。このニュースの背景にある「AIのAfter-Codeギャップ」というキーワードから、日本のBtoBマーケターが学ぶべきヒントを探ります。

ユニコーン企業Harnessの大型調達が示す市場の新たな関心事

こんにちは!BtoBマーケティングブログ編集部です。

海外のテックニュースを追っていると、時々、市場の潮目が変わる瞬間を捉えたようなニュースに出会うことがあります。先日TechCrunchで報じられた、DevOps(デブオプス)プラットフォームを提供するHarness社の資金調達のニュースは、まさにその一つかもしれません。

記事によると、Harness社はシリーズEラウンドで2億4000万ドル(約360億円)を調達し、その評価額はなんと55億ドル(約8250億円)に達したとのこと。ゴールドマン・サックスがリード投資家を務めるなど、名だたるベンチャーキャピタルが参加していることからも、その期待の高さがうかがえます。

しかし、私たちが注目すべきなのは、その金額の大きさだけではありません。彼らが解決しようとしている課題、すなわち「AIの『After-Code(アフターコード)』ギャップ」という点に、これからのBtoBマーケティングの重要なヒントが隠されているのです。

AI活用の「見過ごされがちな」課題、After-Codeギャップとは?

多くの企業がAIの導入や活用に躍起になっていますが、その議論は「いかにして優れたAIモデルを開発するか(コードを書くか)」に集中しがちです。しかし、Harness社が指摘するのは、本当に大変なのはその「後」だということです。

H3 モデル開発は、AI活用のスタートラインに過ぎない

素晴らしいAIモデルを開発できたとしても、それはスタートラインに立ったに過ぎません。そのモデルを実際のビジネス環境に展開(デプロイ)し、安定的に運用し、継続的にパフォーマンスを監視・改善していくプロセスが不可欠です。この「コードを書いた後」のフェーズには、以下のような多くの課題が潜んでいます。

  • デプロイの複雑さ:開発環境から本番環境へ、AIモデルをスムーズに移行させるのは技術的に難しい。
  • 継続的な監視:モデルの精度が落ちていないか、予期せぬ挙動をしていないかを常にチェックする必要がある。
  • セキュリティとガバナンス:誰がモデルを使い、どのようにデータが扱われているかを管理し、セキュリティを担保しなければならない。
  • コスト管理:AIの運用には膨大な計算リソースが必要。コストを最適化しないと、費用対効果が見合わなくなる。

これらの運用・管理業務は、専門的な知識を持つMLOps(機械学習基盤)エンジニアが必要となる非常に高度な領域です。多くの企業では、この部分がボトルネックとなり、せっかく開発したAIがビジネス価値に結びつかない「死の谷」に陥ってしまいます。Harness社は、この複雑で手間のかかるプロセスを自動化するプラットフォームを提供することで、巨額の資金調達を成功させたのです。

日本のBtoBマーケターへの3つの示唆

さて、この一連の動きから、私たち日本のBtoBマーケターは何を学ぶべきでしょうか。単なる海外の技術ニュースとして片付けるのではなく、自社のマーケティング活動に活かす視点で見つめ直してみましょう。

H3 1. 流行の裏に隠れた「リアルな課題」に目を向ける

「AI活用」「DX推進」といったバズワードは、マーケティングメッセージとして魅力的です。しかし、Harness社の成功が示すように、顧客が本当に困っているのは、流行に乗ることそのものではなく、流行を実践しようとしたときに直面する「地味で面倒な課題」です。

あなたの業界でも、顧客が新しいトレンドを導入しようとする際に、どのような「After-Codeギャップ」に直面しているでしょうか? 華やかな成功事例の裏にある、運用、管理、人材不足といった泥臭い部分にこそ、顧客の深いペイン(悩み)が隠されています。そこに寄り添うメッセージこそが、顧客の心を掴むのではないでしょうか。

H3 2. 「課題の解像度」を高め、価値提案をシャープにする

Harness社は、単に「AI開発を支援します」とは言いません。「AIのAfter-Codeギャップを自動化で解決します」と、非常に具体的です。これは、顧客の課題の解像度が極めて高いからこそできる価値提案です。

私たちマーケターも、「業務効率化」「コスト削減」といった漠然としたメリットを訴求するだけでなく、「〇〇業務における、△△という原因で発生する手戻りを、□□の機能でゼロにします」といったレベルまで、課題と解決策を具体的に言語化する必要があります。顧客自身も気づいていないかもしれない課題を的確に指摘し、その解決策を提示することが、信頼獲得への近道です。

H3 3. 市場の「次の関心事」を予測し、コンテンツに反映する

AIの市場が「モデル開発(コード)」から「モデル運用(アフターコード)」に関心が移りつつあるように、あらゆる市場は時間とともに成熟し、顧客の関心事も変化していきます。今は「導入」で手一杯の顧客も、1年後には「運用」や「ROIの最大化」に悩んでいるかもしれません。

市場の半歩先を読み、顧客が次に直面するであろう課題を予測し、先回りしてコンテンツ(ブログ記事、ホワイトペーパー、セミナーなど)を発信していくこと。これができれば、自社を業界のソートリーダーとして位置づけ、将来の優良顧客を育てることにつながるでしょう。

まとめ

Harness社の大型資金調達は、AIという巨大なトレンドの裏で、より具体的で現実的な課題解決に大きなビジネスチャンスがあることを示しています。私たちBtoBマーケターは、この視点を自社のマーケティング活動に取り入れることで、顧客とのエンゲージメントをより一層深めることができるはずです。ぜひ、あなたの顧客が抱える「After-Codeギャップ」は何か、考えてみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました