情報漏洩は他人事じゃない!BtoBマーケターが学ぶべき信頼と危機管理

先日、海外のチャットアプリで個人情報が漏洩する事件が報じられました。一見、私たちには関係のないニュースに聞こえるかもしれませんが、顧客との信頼関係を第一に考えるBtoBマーケターにとって、これは決して「対岸の火事」ではありません。

海外で起きた一件のニュース。しかし、笑い事ではない現実

先日、海外のIT系メディアであるTechCrunchが、とあるチャットアプリのセキュリティ脆弱性について報じました。記事によると、「Freedom Chat」というアプリで、ユーザーの電話番号やPINコード(暗証番号)が外部からアクセス可能な状態にあったとのこと。開発元はすぐさまユーザーのPINをリセットし、対策を施した新バージョンをリリースしたそうですが、多くのユーザーを不安にさせた一件です。

「ふーん、海外のよく知らないアプリの話か」と感じた方も多いかもしれません。しかし、BtoBビジネスの最前線に立つ私たちマーケターこそ、このニュースを自分ごととして捉える必要があります。なぜなら、私たちが日々向き合っているのは、製品やサービスそのものであると同時に、お客様からの「信頼」という、目には見えない最も重要な資産だからです。

BtoBマーケターが情報漏洩を「対岸の火事」にできない3つの理由

なぜ、この一件がBtoBマーケターにとって重要なのでしょうか。その理由は、私たちの業務の根幹に関わる3つのポイントに集約されます。

1. 顧客データはマーケティング活動の「生命線」である

MAツールに蓄積した大切なリード情報、CRMで管理している顧客とのやり取りの履歴、SFAに記録された商談の進捗…。これらはすべて、私たちのマーケティング活動を支える生命線です。もし、自社が提供するサービスや、私たちが利用しているツールからこれらの情報が漏洩してしまったらどうなるでしょうか。

マーケティング活動がストップするどころか、これまで汗水たらして築き上げてきた顧客との関係は一瞬で崩れ去ります。「あの会社はセキュリティが甘い」というレッテルは、次の商談の機会を永遠に奪ってしまうかもしれません。

2. BtoBにおける「信頼」は、機能や価格を上回る価値を持つ

個人向けのサービスと異なり、BtoBの取引は長期的な関係性が基本です。一度導入したツールやサービスは、企業の基幹業務に深く関わることも少なくありません。だからこそ、顧客は機能や価格だけでなく、「この会社なら安心して任せられる」という信頼を何よりも重視します。

セキュリティインシデントは、この信頼を根底から揺るがす最たるものです。どんなに優れた機能も、どんなに魅力的な価格も、信頼という土台がなければ砂上の楼閣に過ぎません。マーケターがどんなに素晴らしいブランドストーリーを語っても、たった一度のインシデントがすべてを無に帰してしまうのです。

3. マーケターは「ブランドの守護者」でもある

私たちは、自社のブランドイメージを構築し、世の中に広めていく役割を担っています。しかし、その役割は攻めだけではありません。ブランドを毀損するリスクから「守る」という視点も不可欠です。

セキュリティインシデントが発生した際、企業の顔として矢面に立つのは、経営陣や広報部門かもしれません。しかし、その裏で顧客からの問い合わせ対応に追われ、失われた信頼を取り戻すために奔走するのは、私たちマーケターや営業担当者なのです。ブランドを守る当事者として、平時からリスクを認識しておく責任があります。

では、私たちマーケターに何ができるのか?

「とはいえ、自分は技術者じゃないし…」と思うかもしれません。もちろん、サーバーの監視やプログラミングは専門家の仕事です。しかし、マーケターだからこそできる、やるべきことがあります。

開発・セキュリティ部門との対話を始める

まずは、社内の開発部門や情報システム部門とコミュニケーションを取ることから始めましょう。「私たちのサービスでは、お客様のデータをどのように守っていますか?」「ISMSなどの第三者認証は取得していますか?」といった基本的な質問でも構いません。

顧客の声を一番知るマーケターがセキュリティに関心を持つことで、社内全体の意識も変わってきます。また、そこで得た知識は、Webサイトのセキュリティページを充実させたり、営業資料に「信頼性」という新たなアピールポイントを加えたりと、マーケティング活動に直接活かすことができます。

インシデント発生時の「伝え方」を想定しておく

万が一、問題が発生してしまった場合。その後の企業の対応が、その後の明暗を分けます。今回の「Freedom Chat」の事例でも、運営元は迅速にPINのリセットとアプリのアップデートという対応を取りました。

私たちマーケターは、広報部門と連携し、「誰に(=影響範囲の顧客)」「何を(=事実と対策)」「いつ・どのように(=チャネルとタイミング)」伝えるかのコミュニケーションプランを事前に想定しておくべきです。誠実で迅速な対応は、時にピンチをチャンスに変え、顧客との絆をより強いものにすることさえあります。

利用する外部ツールも「信頼性」で選ぶ

MA、SFA、Web会議システムなど、私たちの業務は多くのSaaSツールに支えられています。これらのツールを選ぶ際、機能や価格だけで比較検討していないでしょうか。これらのツールにも、私たちは大切な顧客情報を預けることになります。

ISO27001(ISMS)やプライバシーマークといった認証を取得しているか、データセンターはどこにあるかなど、選定基準に「セキュリティ」の項目を必ず加えるようにしましょう。それは、自社を守るだけでなく、お客様への責任を果たすことにも繋がります。

まとめ:信頼を築くのも、壊すのもコミュニケーション

今回ご紹介した海外のニュースは、決して遠い国の話ではありません。顧客データを預かり、その信頼の上にビジネスを成り立たせているBtoB企業にとって、セキュリティは経営の根幹をなす重要事項です。

私たちマーケターは、「セキュリティは技術者の仕事」と線を引くのではなく、顧客との信頼関係を司るプロフェッショナルとして、この問題に積極的に関わっていく必要があります。日々の業務の中にセキュリティの視点を取り入れること。それが、未来の大きなリスクから自社と顧客を守る、最も確実な一歩となるはずです。

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