BtoBマーケにも効く?写真アプリ「Retro」のUXに学ぶ感情体験の作り方

最近話題の写真共有アプリ「Retro」の新機能をご存知ですか?一見、BtoBマーケティングとは無関係に思えるこのアプリに、実は顧客の心を掴むための重要なヒントが隠されています。本記事では、この事例からBtoBにおけるUXの重要性と感情に訴えるマーケティングの可能性を探ります。

話題の写真アプリ「Retro」の新機能「Rewind」とは?

先日、米TechCrunchで報じられて話題になったのが、親しい友人との写真共有に特化したアプリ「Retro」の新機能『Rewind』です。これは、スマホのカメラロールに眠っている過去の写真を、まるでカセットテープを巻き戻すかのように、ダイヤル操作で直感的に振り返ることができるというもの。

ただ時系列に写真を並べるのではなく、「ダイヤルを回して時間を遡る」というアナログで遊び心のある操作感が、デジタルな写真データをエモーショナルな「思い出」へと昇華させています。まさに、自分の記憶を「タイムトラベル」するような体験。このユニークなUX(ユーザーエクスペリエンス)が、多くのユーザーの心を掴んでいます。

なぜ今、このC向けアプリの事例をBtoBマーケターが学ぶべきなのか

「なるほど、面白い機能だね。でも、それはBtoCの話でしょう?」「我々BtoBマーケティングには関係ないのでは?」

そう思われた方も少なくないかもしれません。確かに、BtoBの製品選定は、機能の網羅性や費用対効果といった合理的な判断が中心です。しかし、本当にそれだけでしょうか。

私自身、BtoBマーケティングの現場にいて強く感じるのは、BtoBとBtoCの境界線が 점점 曖昧になっているということです。どんなに高機能なSaaSツールであっても、最終的にそれを使うのは感情を持った「人」。日々の業務で使うツールが「なんだか使いにくい」「触っていて楽しくない」と感じれば、顧客のエンゲージメントは下がり、最悪の場合、解約(チャーン)につながってしまいます。

合理的な判断の裏側には、必ず「使いやすい」「信頼できる」「このサービスが好きだ」といった感情的な満足度が隠れています。Retroの事例は、そんな「人の心」を動かす体験設計のヒントに満ち溢れているのです。

Retroの事例から学ぶ、BtoBマーケティングへの3つの応用ヒント

では、具体的にRetroの「Rewind」機能から、私たちは何を学び、自社のマーケティング活動に活かすことができるのでしょうか。3つのヒントにまとめてみました。

ヒント1:UI/UXで「触れる楽しさ」を演出し、エンゲージメントを高める

最大の学びは、やはりその卓越したUI/UXです。「ダイヤルを回す」という行為は、私たちに懐かしさや心地よさを感じさせます。この「触っていて楽しい」という感覚は、ユーザーがサービスに能動的に関わるきっかけになります。

これをBtoBの世界で考えてみましょう。例えば、多くのSaaSが持つ管理画面やダッシュボード。無機質に数字やグラフが並んでいるだけではありませんか?もし、レポートの期間指定がRetroのダイヤルのような直感的で楽しいUIだったらどうでしょう。ユーザーはもっと積極的にデータを触り、そこから新たなインサイトを見つけようとするかもしれません。

無機質になりがちなBtoBツールだからこそ、こうした「遊び心」や「心地よさ」が、競合他社との強力な差別化要因となり、顧客の利用継続率(リテンション)を大きく左右するのです。

ヒント2:「過去の体験」をフックに、顧客との関係性を深化させる

「Rewind」機能がユーザーの心を打つのは、それが「過去の思い出」という極めてパーソナルな体験にアクセスするからです。この「過去を振り返る」というアプローチは、BtoBの顧客リレーションシップにおいても非常に有効です。

例えば、以下のような施策が考えられます。

  • 導入1周年記念レポート: ツール導入から1年間の活用状況や成果をインフォグラフィックでまとめ、「この1年でこれだけの成果が出ましたね!」と顧客と共に成功を祝う。
  • ジャーニーの可視化: 導入初期のつまずきから、活用が進んで成果が出始めるまでの軌跡をストーリーとして提示する。顧客自身も忘れていたような「成功の軌跡」を可視化することで、「このツールと一緒に成長してきたんだ」というパートナー意識を醸成できます。

単なるツール提供者から、顧客のビジネスジャーニーに寄り添う「信頼できるパートナー」へ。過去の体験を共有することは、その関係性を築くための強力なフックになります。

ヒント3:機能名を「体験価値」を伝える言葉に翻訳する

最後に注目したいのが、言葉の力です。Retroは新機能を単に「過去の写真閲覧機能」とは呼びませんでした。『Rewind(巻き戻し)』と名付け、「タイムトラベルするような体験」というストーリーを語りました。このネーミングとストーリーテリングが、機能の魅力を何倍にも増幅させています。

BtoB製品のアップデート情報はどうしても、「〇〇機能の追加」「〇〇の連携強化」といった無味乾燥な言葉になりがちです。それを、顧客が享受できる「体験価値」を伝える言葉に翻訳してみましょう。

  • (変更前)「データ集計機能の高速化」→(変更後)「レポート作成の待ち時間をゼロに。思考を止めない分析体験をあなたに」
  • (変更前)「テンプレート機能の追加」→(変更後)「クリック一つで、あの成功事例をあなたの会社でも再現できます」

専門用語を並べるのではなく、顧客が「お、なんだか良さそうだな」と感情的にワクワクするような言葉を選ぶ。これも立派なUXデザインの一つです。

まとめ:BtoBマーケティングこそ「人の心」を動かす工夫を

今回は、C向けの写真共有アプリ「Retro」の事例から、BtoBマーケティングに応用できるヒントを探ってみました。一見遠い世界の話に思えても、その根底にある「ユーザーの心を動かし、素晴らしい体験を提供する」という思想は、BtoBもBtoCも同じです。

機能や価格での競争が激化する今、顧客に選ばれ、長く使い続けてもらうためには、合理的な価値だけでなく、感情的な価値を提供することが不可欠です。あなたの製品やサービスも、Retroのような「ちょっとした工夫」で、もっと顧客に愛される存在になれるかもしれません。

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