「SNS」で一括りにするな!Redditの主張に学ぶBtoB戦略

海外で話題の「RedditはSNSではない」という主張。一見、日本のBtoBマーケターには関係ないように思えるこのニュースですが、実はプラットフォーム選定やコミュニティ戦略を考える上で、非常に重要なヒントが隠されています。

発端はオーストラリアの法規制、Redditが示した「独自性」

先日、TechCrunchで興味深いニュースが報じられました。巨大匿名掲示板として知られるRedditが、オーストラリアで検討されている「16歳未満のソーシャルメディア利用を禁止する法律」に対し、「我々は、その法律が定義する“ソーシャルメディアプラットフォーム”には当てはまらない」と主張しているというのです。

FacebookやInstagram、X(旧Twitter)などが真っ先に思い浮かぶ「ソーシャルメディア」。その中で、なぜRedditは自らを「違う」と位置づけているのでしょうか。

その理由は、プラットフォームの成り立ちにあります。多くのSNSが実名や個人のアイデンティティをベースに、友人や知人との「つながり」を主軸にしているのに対し、Redditは匿名を基本とし、特定の趣味や興味・関心(「サブレディット」と呼ばれるコミュニティ)に基づいた「情報のやりとり」が中心です。つまり、「誰が」言ったかよりも「何を」言ったかが重視される文化が根付いているのです。

今回のRedditの主張は法的な文脈でのものですが、私たちBtoBマーケターは、この「自社の立ち位置を明確にする」という姿勢から、学ぶべきことがたくさんありそうです。

「ソーシャルメディア」という“大きな括り”の罠

さて、この話を日本のBtoBマーケティングに引き寄せてみましょう。
あなたは、「SNSマーケティング」と聞いて、何を思い浮かべますか?おそらく、Facebook広告、Xでの情報発信、あるいは最近ではBtoBでも活用事例が増えてきたInstagramなどをイメージする方が多いのではないでしょうか。

しかし、そこで思考停止してしまうのは、非常にもったいない。今回のRedditの事例が示すように、一口に「ソーシャルメディア」と言っても、その実態は千差万別です。それぞれのプラットフォームには独自の文化があり、ユーザーがそこに集まる目的も全く異なります。

  • Facebook:実名でのつながりが基本。ビジネス情報も流れるが、プライベートな近況報告も多い。
  • X(旧Twitter):リアルタイム性と拡散力が魅力。速報性の高い情報や、気軽なコミュニケーションに向いている。
  • LinkedIn:ビジネス特化型。キャリアや専門知識に関する質の高い情報交換が行われる。
  • Reddit(や日本の類似サービス):匿名での深い情報交換。ニッチで専門的なコミュニティが多数存在する。

「とりあえず流行っているからXをやる」「上司の指示でFacebookページを作った」といった“思考停止”のSNS運用は、かけた労力の割に成果が出ない典型的なパターンです。重要なのは、「ソーシャルメディア」という大きな括りで捉えるのではなく、各プラットフォームの本質を理解し、自社の目的やターゲットに最適な場所はどこかを見極めることなのです。

Redditの主張からBtoBマーケターが学ぶべき3つの視点

では、具体的に私たちはこのニュースから何を学び、日々の業務に活かせばよいのでしょうか。ここでは3つの視点にまとめてみました。

視点1:プラットフォームの「本質」を見極める

まず、利用を検討しているプラットフォームの「本質」を深く理解することが重要です。単にユーザー数や機能を見るだけでなく、以下の点を自問自答してみてください。

  • そのプラットフォームのユーザーは、「何のために」そこに集まっているのか?(情報収集?暇つぶし?同業者との交流?)
  • コミュニケーションは「どのように」行われているのか?(オープンな議論?クローズドなDM?一方的な発信?)
  • 評価されるコンテンツは「どんな」ものか?(専門性の高い分析?共感を呼ぶストーリー?速報性のあるニュース?)

例えば、高度な技術を要するBtoB製品のプロモーションを、映えが重視されるInstagramで展開しても、なかなか響きませんよね。それよりも、専門家が集まるLinkedInのグループや、技術系のコミュニティで誠実に情報提供する方が、よほど効果的でしょう。自社のターゲット顧客が持つ「課題解決」や「情報収集」といった欲求に、そのプラットフォームが応えられる場所なのかどうか。その見極めが、戦略の第一歩となります。

視点2:ニッチな「コミュニティ」の価値を再認識する

Redditが「サブレディット」というコミュニティの集合体である点は、BtoBマーケティングにおいて非常に示唆に富んでいます。BtoBの顧客は、特定の業界や職種、あるいは特定の課題を抱えた、いわば「ニッチな集団」です。

マス向けの広告を打つよりも、そうしたニッチなコミュニティに直接アプローチする方が、はるかに効率的で濃い関係性を築けます。それは、SNS上の特定のハッシュタグを追いかけることかもしれませんし、業界特化型のオンラインフォーラムに参加することかもしれません。

重要なのは、「自分たちの顧客は、普段どこで情報交換をしているのだろう?」という顧客視点の探究心です。その場所を見つけ出し、売り込むのではなく、まずは一員として価値ある情報を提供し、信頼を勝ち得ていく。これこそ、現代のBtoBにおけるコミュニティマーケティングの真髄と言えるでしょう。

視点3:自社の「ポジショニング」を明確に言語化する

最後に、今回のRedditの「我々は他とは違う」という力強い主張そのものに学びましょう。彼らは、法的な要請に対して、自社のプラットフォームが持つ独自性や哲学を明確に言語化しました。

これは、マーケティングにおける「ポジショニング戦略」と全く同じです。皆さんの会社や製品・サービスは、競合と何が違うのでしょうか?顧客にどのような独自の価値を提供できるのでしょうか?

「うちは、〇〇な課題を持つ△△な企業向けの、□□という点で他社とは違うサービスです」

このように、自社の立ち位置を明確に言語化できているでしょうか。このポジショニングが明確であれば、発信するメッセージに一貫性が生まれ、どのプラットフォームで、誰に、何を伝えるべきかという戦略も自ずと定まってきます。

まとめ:羅針盤を失わないために

今回は、Redditのニュースをきっかけに、BtoBマーケティングにおけるプラットフォーム戦略について考えてみました。「SNS」という言葉があまりに一般化したことで、私たちはつい、その本質を見失いがちです。

しかし、各プラットフォームはそれぞれ異なる海図を持つ、全く別の航路です。自社の船(製品・サービス)が、どの海図を使い、どの港(顧客)を目指すのか。その羅針盤となるのが、自社の明確なポジショニングと、プラットフォームの本質を見抜く目に他なりません。

ぜひこの機会に、現在運用しているSNSが本当に目的に合っているのか、見直してみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、マーケティング活動全体の成果を大きく変えるかもしれません。

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