「とりあえずスプレッドシートで営業管理してるんだけど、そろそろちゃんと整えたい」
「専用のCRM(顧客関係管理:Customer Relationship Management)を入れるほどではないけど、今のままでは不安」
そんなときにちょうど良いのが、Google Workspaceをそのまま“CRM的に”使い倒すやり方です。
Gmail、スプレッドシート、カレンダー、ドライブ。
すでに社内で当たり前に使っているこれらのツールを、少し設計し直すだけで、「なんとなく管理」から一段上の営業管理に変えることができます。
この記事では、
- スプレッドシートでの顧客・案件管理
- Gmailとカレンダーを使ったアポ・フォロー管理
- ドライブでの資料共有・ナレッジ共有
- ちょっとした自動化
まで、Google Workspaceだけで組む“Google CRM的な営業管理”を、ゼロから順番に整理していきます。
営業管理の「器」を Google Workspace でどう組むか
営業活動を分解すると、大きくこんな情報が流れています。
- 顧客や見込み客の情報
- 進行中の案件や商談の状況
- メールや打ち合わせなどのコミュニケーション
- 提案資料・見積書・議事録などのドキュメント
Google Workspaceで考えると、
- 顧客・案件 → スプレッドシート
- コミュニケーション → Gmail / カレンダー / Google Meet
- ドキュメント → Google ドライブ(Docs / Slides / Sheets)
がそれぞれの役割を担います。
特別なことをしなくても、
「顧客・案件はスプシ」「やりとりはGmail+カレンダー」「資料はドライブ」
というだけで、CRMの基本的な構造はだいたい揃っています。
あとは、これを「ちゃんと使える形」に整えるだけです。
スプレッドシートで「顧客台帳」と「案件ボード」を分ける
まずは土台となるスプレッドシートから。
ポイントは、「顧客」と「案件」を1枚に詰め込まないことです。
顧客台帳(顧客マスタ)
顧客台帳は、会社・担当者の情報を落ち着いて整理しておく場所です。
列としては、次のような項目があると使いやすくなります。
- 顧客ID(システム用の連番)
- 会社名 / 氏名
- 部署・役職
- メールアドレス
- 電話番号
- 住所やエリア
- 業種・セグメント
- きっかけ(展示会 / Web問い合わせ / 紹介 など)
- ステータス(見込み / 既存顧客 / 休眠など)
- 自社の担当営業
- メモ欄
ここはあまり頻繁に書き換える場所ではなく、
「名刺が増えてきたらここにちゃんと落とし込む」くらいのテンポ感で管理します。
案件ボード(案件マスタ)
一方で、案件(商談)は動きが激しい情報です。
顧客台帳とは別シートにしておき、顧客IDで紐づけておくと後々便利です。
- 案件ID
- 顧客ID(顧客台帳とつなぐためのキー)
- 案件名
- 提案内容・プラン名
- 見込み金額 / 予算
- ステージ(アポ取得 / ヒアリング / 提案 / 見積 / クロージング / 受注 / 失注)
- 次回アクション日
- 次回アクション内容
- 担当営業
- 受注日・失注日
- 失注理由
営業会議で見るのは基本的にこの「案件ボード」側です。
顧客台帳と案件ボードを分けることで、
- 「今、何件動いているか」
- 「どのステージに案件がたまっているか」
- 「次に連絡すべき先はどこか」
といった話が、ひと目でしやすくなります。
Gmail と カレンダーでアポとフォローを漏らさない
顧客・案件の情報はスプレッドシートに置きつつ、
実際に手を動かすのは Gmail と Google カレンダー です。
メール=コミュニケーションのログにする
Gmailは、すでに非常に強力な「顧客ごとの履歴ビュー」です。
無理にメールの内容をスプレッドシートへコピペする必要はありません。
- 顧客台帳に、主要なメールアドレスを必ず登録しておく
- 「この顧客とのやりとりは?」と思ったら、Gmailでメールアドレス検索
- 必要であれば、Gmailのラベルで「案件名」や「ステージ」を軽くタグ付け
このくらいの運用でも、
「誰がどこまでやりとりしていたのか」はだいたい追えるようになります。
カレンダー=アポと次アクションのハブにする
アポ調整・次回打ち合わせ・社内のすり合わせ。
これらはすべて、Googleカレンダーに寄せ切ってしまうのが楽です。
- 顧客とのミーティングは必ずカレンダー登録する
(タイトルに会社名+用件を入れると後で探しやすい) - 説明欄に簡単な議題やゴール、案件IDを書いておく
- 「次回アクション日」は、案件ボードに書くだけでなく、カレンダーにも予定 or タスクを入れる
カレンダーの「予約スケジュール」機能を使えば、
自分の空き時間をまとめて共有し、相手に選んでもらう形のアポ調整もできます。
メールでの往復を減らすだけでも、かなりの時間短縮になります。
ドライブで資料共有と「案件ごとのフォルダ」をつくる
提案書、見積書、議事録。
資料がバラバラな場所に保管されていると、結局誰かの頭の中にしか情報がない状態になります。
Google ドライブを「案件単位」で設計すると、かなり見通しが良くなります。
フォルダの切り方
おすすめは、まず「顧客ごと」にフォルダを作り、その中に「案件ごとのフォルダ」をぶら下げる形です。
/営業/顧客/○○株式会社/00_共通(基本契約書、会社情報など)2025-01_新サービス導入2025-06_追加ライセンス
案件フォルダの中には、
- 提案資料(Google スライド)
- 想定見積(Google スプレッドシート)
- 打ち合わせメモ・議事録(Google ドキュメント)
をまとめておきます。
案件ボードの「案件ID」や「案件名」の列に、このフォルダのURLを貼っておけば、
営業会議中に「資料どこ?」となることはかなり減ります。
権限の考え方
- 個人のマイドライブではなく、共有ドライブを基本にする
- 顧客ごとのフォルダは営業チーム全員が見えるように
- 社外共有が必要な資料だけ、ファイル単位で共有リンクやメールアドレスを設定
このくらいシンプルなルールでも、
「退職した人のマイドライブの中に重要なファイルが眠っている」といった事態は避けられます。
最低限決めておきたい “運用ルール” たち
ツールの設計と同じくらい大事なのが、運用ルールのすり合わせです。
ここが曖昧だと、「同じスプレッドシートを見ているのに、人によって解釈が違う」状態になります。
たとえば、次のようなことは一度テキストにしておくと安心です。
- 「案件として登録するのはどのタイミングか」
(問い合わせが来た時点なのか、アポが取れた時点なのか) - 「受注」「失注」「休眠」などの言葉の定義
- 顧客台帳・案件ボードをいつ更新するか
(毎週の営業会議前、ステージが変わったタイミング…など) - 列の追加・削除をしていい人は誰か
A4一枚のNotionページやGoogleドキュメントにまとめておき、
新しく入るメンバーにはそこを最初に読んでもらうようにすると、教育コストも下がります。
もう一歩進めるなら:ちょっとした自動化
Google Workspaceの良いところは、「少しだけ賢くできる」ことです。
全部を自動化しようとすると大変なので、効きそうなところを1〜2個だけやるのがおすすめです。
例1:問い合わせ → スプレッドシート → 通知
よくあるパターンは、Webサイトの問い合わせです。
- お問い合わせフォームを Googleフォームで作る
- 回答先を「リード一覧」用のスプレッドシートにする
- 新しい行が追加されたら、営業チームにメール or Chat通知が飛ぶようにする(Apps Script)
これだけで、「〇〇様からの問い合わせメールに誰も気づいていなかった」という事故はかなり減ります。
例2:ステージが動いたらマネージャーにお知らせ
案件ボードのステージが「見積」から「クロージング」に変わったときなど、
特定のステージ変更時にだけ通知を飛ばす、ということもできます。
- ステージ列の値が変わったときにスクリプトを発火
- 該当行の案件名・顧客名・見込み金額をメールに書いて、マネージャーへ送る
「全部追うのは無理だけど、大きめの案件だけはリアルタイムに知りたい」というときにちょうどいい仕掛けです。
専用CRMが必要になる“境目”はどこか
Google Workspaceをベースにした「なんちゃってCRM」で十分戦えるフェーズもあれば、
どこかのタイミングで専用CRMに乗り換えた方がいいフェーズもあります。
ざっくりとした目安としては、
- 営業メンバーが二桁を超え、権限や承認フローが必要になってきたとき
- 案件数が増えすぎて、スプレッドシートが重くなってきたとき
- 「個人の活動管理」から一歩進んで、
チャネル別の効率、ファネル分析、予算との紐づけまで見たくなってきたとき - MAツールや請求システム、自社プロダクトなど、
他システムとの連携前提で回したいとき
このあたりが、専用CRMを検討し始めるサインです。
逆に言えば、それまでは Google Workspaceベースの“Google CRM”で十分 なケースが多いとも言えます。
まとめ:まずは「整えたスプシ+Gmail+カレンダー」から始める
整理すると、Google Workspaceを使った営業管理は次のようなイメージです。
- 顧客・案件の情報は、
顧客台帳(顧客マスタ) と 案件ボード(案件マスタ) の2シートにきちんと分ける - メールやアポは、
Gmail と カレンダーを“履歴と次アクションのハブ”として使う - 提案書や議事録は、
ドライブで「顧客フォルダ → 案件フォルダ」構造にそろえて保存 - そこに、
お問い合わせの自動登録や、簡単な通知などを少し足していく
これだけでも、「ただのスプレッドシート管理」からはかなり脱却できます。
いきなり完璧な仕組みを作ろうとせず、
- 顧客台帳と案件ボードを分ける
- カレンダーにすべてのアポと次アクションを載せる
- ドライブを顧客・案件単位で整理する
この3つだけ、まず形にしてみてください。
それだけで、「Google CRM的な営業管理」の第一歩には、十分なります。


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