スプレッドシートでの営業管理 完全ガイド|テンプレ付きで今日から始められる

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「とりあえずちゃんと営業管理したい。でも、いきなり高いシステムはちょっと…」

そんなふうに思っている方は多いのではないでしょうか。そんなときの現実的な解決策が、Googleスプレッドシートを使った営業管理です。

この記事では、どんな会社やフェーズならスプレッドシートで十分なのか、どんな項目で設計すれば「ちゃんと管理」できるのか、そのままコピペして使えるテンプレート構成、現場が入力を続けるための運用ルール、便利な関数や機能の使いどころ、いつ「スプレッドシート卒業」を考えるべきかまで、まとめて解説していきます。


スプレッドシートで営業管理をするメリット・デメリット

まずは、専用ツールではなくスプレッドシートで営業管理する意味を整理しておきましょう。

初期コストがほぼゼロというのが、スプレッドシート営業管理の最大の魅力です。すでにGoogleアカウントさえあれば、追加費用なしで今日から始められます。導入スピードも速く、アカウント発行や初期設定が不要なので、今日作って明日から使うことも可能です。

カスタマイズの自由度が高いのも見逃せません。業種や営業スタイルに合わせて、自分たちで項目やレイアウトを自由に変えられます。複数人で同時編集でき、更新もリアルタイムで共有されるので、共同編集やコメントもしやすい環境です。さらに、フォームやスケジュール管理と組み合わせれば、入力の自動化も狙えます。

一方で、デメリットもしっかり理解しておく必要があります。入力ルールを決めないと、すぐにグチャグチャになってしまいます。人によって書き方が違うと、「後から集計できない」状態になりやすいんです。履歴管理や権限管理が弱く、誰がいつ何を変えたか細かく追うのは難しいでしょう。

データ量が増えると重くなるのも悩みどころです。数万行を超えるあたりから、表示やフィルタがもたつき始めます。ワークフローや自動アラートには限界があり、「◯日後に自動でリマインドメール」といった機能を実現するには、工夫やスクリプトが必要になってきます。

「今はまだ少人数・少件数だけど、きちんと整理したい」というフェーズで、スプレッドシート営業管理は特に相性が良いと言えるでしょう。

スプレッドシートが向いている会社規模・フェーズ

目安としては、営業担当が1〜5名くらい、月間の新規案件数が100件程度までなら、スプレッドシートで十分対応できます。商談ステータスや売上予測を「まずは見える化したい」段階、専用システムは検討しているけれど「いきなり年間契約は怖い」という段階の会社に向いています。

逆に、営業担当が10名以上、商談数が毎月数百件以上、見積・請求・契約などを含めた営業プロセス全体を自動化したいという状況になってきたら、スプレッドシートだけでは厳しくなってきます。この「どこまでスプレッドシートで頑張るか」については、記事の最後で改めて整理します。

よくある失敗パターン(ファイル乱立・入力されない 等)

スプレッドシートでの営業管理がうまくいかない原因は、ツールそのものよりも運用ルールにあることが多いんです。代表的な失敗パターンをいくつか見ていきましょう。

まず、ファイルが乱立するケースです。「顧客リスト_最新版」「顧客リスト_新」「顧客リスト_最終」などが並び、人によって別ファイルを作ってしまい、情報が分散してしまいます。

次に、入力されない・更新されない問題です。「あとでまとめて入力します」と言いながら、誰も更新しない。「会議のときだけ一気に入力」になり、抜け漏れが多発してしまいます。

項目や書き方がバラバラになるのもよくある失敗です。株式会社、(株)、(株)、カブシキガイシャ…と会社名が複数パターンで入力され、日付フォーマットが人によって違うと集計できなくなってしまいます。

同じ顧客が重複登録されることもあります。営業ごとにリストを持ち、「同じ会社に別々の人がアプローチ」してしまう事態になりかねません。

「見るためのシート」と「入力するシート」が分かれていないのも問題です。見やすさ重視で装飾だけ増え、入力が面倒になる。集計のための計算列がそのまま表に出てきて、現場はどこを触れば良いか分からなくなってしまいます。

この記事の後半では、こうした失敗を避けるための基本設計と運用ルールをセットで解説していきます。


営業管理シートの基本設計(最低限おさえるべき項目)

スプレッドシートで営業管理をするときは、次の3つのシートに分けると整理しやすくなります。顧客管理シート(会社・担当者)、案件・商談管理シート、アクティビティ管理シート(架電・訪問・メールなどの履歴)です。

この3つがきちんと分かれていれば、後からいくらでも拡張できる設計になります。

顧客管理(会社・担当者・連絡先など)

顧客管理シートには、顧客ID(自動採番で一意のキーになるもの)、会社名、会社名カナ(任意)、部署名、役職、担当者名、メールアドレス、電話番号、エリア(都道府県など)、業種、従業員規模(プルダウン)、ステータス(見込み、取引中、失注、休眠など)、初回接点日、メモといった項目を設けます。

「顧客ID」は必ずつくりましょう。後述する案件シートやアクティビティシートと紐づけるためのキーになります。業種や規模などはプルダウンで選択できるようにしておくと、集計や絞り込みで活きてきます。「ステータス」を決めておけば、「取引中の顧客だけ見る」「失注・休眠を一時的に隠す」ができるようになります。

案件・商談管理(フェーズ・金額・確度・担当者 等)

案件・商談管理シートの基本項目は、案件ID、顧客ID(顧客シートと紐づけ)、案件名(会社名_サービス名_用途 など命名ルールを決める)、フェーズ(リード、ヒアリング、提案、見積、最終調整、受注、失注 など)、受注予定日(または予定月)、金額(税抜)、受注確度(10%、30%、50%、80%、100%など)、担当営業、流入チャネル(紹介、広告、展示会、問い合わせ 等)、失注理由(失注時に入力)、メモです。

よく使う計算列として「予測売上」があります。これは金額に受注確度をかけたもので、例えば =G2 * H2(G列が金額、H列が受注確度のとき)という式になります。この「予測売上」を使って月別パイプラインを可視化すると、売上予測の精度が一気に上がります。

アクティビティ管理(架電・訪問・メール・次回アクション)

アクティビティ管理は、営業活動の「履歴」を記録するシートです。活動ID、日付、営業担当、顧客ID、案件ID(あれば)、活動種別(架電、メール、オンライン商談、訪問、セミナー参加 などプルダウン)、活動内容(簡単なメモ)、結果(担当者不在、ヒアリング完了、見積依頼 など)、次回アクション日、次回アクション内容といった項目を設けます。

「日報」の代わりに、このアクティビティシートに毎日入力してもらう運用がシンプルです。「次回アクション日」でフィルタすると、今日から今週追うべき案件が一目で分かります。


【テンプレ配布】営業管理スプレッドシートの例

ここからは、実際に使えるテンプレート構成を3パターン紹介します。見出しごとの表は、そのままコピーしてスプレッドシートに貼り付け、列名として使えます。

顧客リスト用テンプレ

まずは、最もベーシックな顧客リストです。

顧客ID会社名会社名カナ部署名役職担当者名メールアドレス電話番号エリア業種従業員規模ステータス初回接点日メモ
C0001○○産業株式会社○○サンギョウ営業部課長山田 太郎taro@example.com03-xxxx-xxxx東京製造100〜299名見込み2025/01/10展示会で名刺交換

顧客IDは C0001 のようにゼロ埋めで揃えておくと見やすくなります。エリア、業種、従業員規模、ステータスはデータの入力規則でプルダウン化しておきましょう。

商談ボード用テンプレ

次に、案件・商談管理シートのテンプレです。

案件ID顧客ID案件名フェーズ受注予定日金額受注確度担当営業流入チャネル失注理由メモ予測売上
D0001C0001○○産業_クラウド導入支援提案中2025/02/281,200,0000.5佐藤展示会オンラインMTG予定=F2*G2

フェーズごとに色分け(条件付き書式)して、「今どこが詰まっているか」が分かるようにするのがおすすめです。受注予定日で昇順ソートし、「今月・来月のパイプライン」を会議で確認するといいでしょう。

日報+案件のシンプル統合テンプレ

「営業1〜2名で、とりあえず日々の動きと案件を一枚で管理したい」場合は、日報と案件を統合したシンプルシートも有効です。

日付営業担当会社名担当者名活動種別活動内容案件ステータス金額(あれば)次回アクション日次回アクション内容メモ
2025/01/15山田○○産業株式会社山田 太郎架電現状ヒアリング見込みリード2025/01/20詳細ヒアリングで再度電話

「日報を出す」イコール「営業管理シートを更新する」という運用にしやすいのがメリットです。管理者側も、この1枚を見れば状況を把握できます。

ただし、顧客や案件ごとの履歴を後から追いにくいというデメリットもあります。一定規模になったら、先ほどの「顧客・案件・アクティビティ」の3シート構成に移行するのがおすすめです。


現場が続けられる運用ルールの決め方

良いテンプレートを作っても、運用ルールが曖昧だと3ヶ月で崩壊します。最低限、「どのシートに」「誰が」「いつ」入力するか、案件名・ステータス・日付などの書き方ルール、週次・月次で必ずシートを開く場(会議)を作ることの3つだけは最初から決めておきましょう。

入力ルール・命名規則の決め方

具体的には、次のようなルールを文書化して共有しておくのがポイントです。

案件名ルールは、例えば 会社名_サービス名_用途 という形式にします。良い例は「○○産業_営業管理ツール導入_本社用」で、NGな例は「テスト」「仮」「商談」といった曖昧なものです。

日付のルールは、すべて YYYY/MM/DD 形式で入力します。例えば 2025/01/15 という形式です。

ステータスの選択肢は固定しましょう。顧客ステータスは「見込み、取引中、失注、休眠」の4種類など、フェーズは「リード、ヒアリング、提案、見積、最終調整、受注、失注」などと決めます。このリストを入力規則(プルダウン)に設定し、自由入力を禁止すると運用が安定します。

必須項目は「空欄禁止」にします。顧客シートなら会社名・担当者名・メールまたは電話、案件シートなら顧客ID・案件名・フェーズ・担当営業です。ここが空欄の行は「入力不備」として、会議時に必ずチェックするようにしましょう。

週次・月次のレビュー方法(会議での使い方)

スプレッドシート営業管理を定着させるには、会議の場で必ずシートを使うことが重要です。

週次ミーティングは30〜60分で、案件シートとアクティビティシートを対象にします。前週からの新規案件・ステータス変更の確認、今週受注予定案件の確認、次回アクション日が過ぎている案件の洗い出し、入力漏れ・ステータス不備の是正といったアジェンダで進めます。

月次ミーティングは60〜90分で、集計シート(後述)と案件シートを対象にします。月間の受注件数・受注金額の振り返り、フェーズ別の滞留状況(どこで止まりやすいか)、流入チャネル別の成果(展示会・広告・紹介など)、来月・再来月のパイプライン確認といった内容を扱います。

「会議前までに入力しておく」ことをルール化すると、入力していないと自分が困る仕組みになります。会議で直接シートを操作し、フィルタや並べ替えを見せながら話すことで、「なんとなくの雰囲気」ではなく、データで話す文化をつくることができます。


もっと便利にするための関数・機能

ここからは、営業管理に特に効くスプレッドシートの機能を紹介します。全部を一気にやる必要はありませんが、「これならすぐ使えそう」というものから試してみてください。

フィルタ・並び替えで「今追うべき案件」を絞り込む

基本機能としてのフィルタや並べ替えは、案件シートの1行目(項目行)を選択してフィルタを設定し、「フェーズが提案以降」「受注予定日が今月」のように条件を絞り込むことができます。

フィルタビューを活用すれば、「自分専用のビュー」を保存できるので、自分の担当案件だけ、提案中以上の案件だけをワンクリックで呼び出せるようになります。

関数での絞り込み例として、別シートに「今月フォローすべき案件一覧」を自動表示することもできます。

=FILTER(
  案件!A2:L,
  (案件!D2:D="提案中") * (案件!E2:E>=TODAY()) * (案件!E2:E<=EOMONTH(TODAY(),0))
)

この式では、案件!D2:D がフェーズ列、案件!E2:E が受注予定日列を指しています。「提案中」かつ「今月受注予定」の案件だけを抜き出すイメージです。

条件付き書式でホット案件を色付け

例えば、受注確度が高く、かつ受注予定日が近い案件を赤くするには、案件シート全体(例:A2:L1000)を選択して、「表示形式」から「条件付き書式」を選びます。ルールの種類で「カスタム数式」を選択し、次のような数式を設定します。

=AND($G2>=0.7, $E2-TODAY()<=30)

G列が受注確度(0〜1の小数)、E列が受注予定日のときの例です。背景色を濃い色に設定し、「完了」をクリックすれば、30日以内に決まりそうなホット案件が自動で目立つようになります。

集計シートでパイプライン・売上予測を可視化

集計専用のシートを1枚つくるだけで、「感覚」でしか分からなかった営業状況が一気にクリアになります。

月別受注金額の集計には、SUMIFS関数を使います。

=SUMIFS(
  案件!F:F,
  案件!D:D, "受注",
  案件!E:E, ">=2025-01-01",
  案件!E:E, "<=2025-01-31"
)

フェーズ別の案件数を出すには、COUNTIFS関数が便利です。

=COUNTIFS(案件!D:D, "提案中")

「リード」「提案」「見積」「最終調整」ごとの件数を出しておくと、どこがボトルネックか分かります。

ピボットテーブルによる可視化も効果的です。「データ」から「ピボットテーブル」を選択し、行に受注予定月、列にフェーズ、値に金額の合計または予測売上の合計を設定します。これだけで、月別のパイプライン状況が一目で分かるダッシュボードになります。


スプレッドシート営業管理の限界と、次の一歩

最後に、「どこまでスプレッドシートでやるか」「いつ専用ツールを検討すべきか」を整理します。

データ量・人数が増えてくると起きる問題

次のような兆候が出てきたら、「そろそろ限界かも…」と考えてよいサインです。シートが重くて、フィルタや並べ替えのたびに数秒から十数秒待たされる。誰かが開いていると、「閲覧専用」でしか開けないことが増えてきた。誰かが列を動かしてしまい、関数が壊れる事故が頻発する。案件数が増えすぎて、「1案件1行」では状況を追えなくなってきた。顧客・案件・活動の関係が複雑になり、スプレッドシートではモデリングしきれない。見積・請求・契約書の作成や、メールの一斉配信など、周辺業務も含めて自動化したくなってきた、といった状況です。

このあたりから先は、スプレッドシート単体ではなく、営業支援システム(SFA)、顧客管理システム(CRM)、あるいはスプレッドシートと連携するクラウドサービスと組み合わせるフェーズになります。

どこまでスプレッドシートで頑張るかの判断基準

ざっくりとした判断の目安をお伝えします。

まだスプレッドシートで十分な状態は、営業人数が5名以下、月間新規案件が100件未満、「まずは全体を見える化」する段階で、メールは個々の担当が手作業で送っても回るボリュームの場合です。

そろそろ専用ツールも検討したい状態は、営業人数が5〜10名以上、月間新規案件が100〜300件以上、商談ステージに応じてメールやタスクを自動で出したくなってきた、案件・見積・請求・契約まで一気通貫で管理したい、権限管理やログ管理、セキュリティ要件が厳しくなってきた、といった場合です。


まとめ

スプレッドシートは、「これから営業管理をちゃんと始めたい」小規模から成長フェーズの会社にとって、最速かつ低コストの選択肢です。顧客、案件、アクティビティの3シート構成をベースに、この記事のテンプレートをカスタマイズすれば、今日からでも運用をスタートできます。

うまくいかない原因の多くは運用ルールの欠如なので、「誰が・いつ・どこに・どう入力するか」を最初に決めておくことが重要です。フィルタ、条件付き書式、SUMIFS関数やCOUNTIFS関数、ピボットテーブルを組み合わせれば、実務に耐えるレベルの営業ダッシュボードが作れます。

営業人数や案件数が増え、周辺業務の自動化ニーズが高まってきたら、スプレッドシートを卒業して専用ツールへ進むタイミングです。

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