ウェビナーや商談のお礼、いつも同じギフト券で済ませていませんか?海外で「興味・関心」で贈る新しいギフトサービスが注目を集めています。単なるお礼に留まらない、顧客との関係を深めるための新しいヒントを探ります。
海外で話題!「興味・関心」で贈る新しいギフトカードとは?
先日、海外のテック系メディアで面白いニュースを見つけました。デジタルギフトカードのプラットフォームを提供するスタートアップ「On Me」が、600万ドル(日本円で約9億円!)もの資金調達に成功したというのです。
彼らが提供するサービスのどこが画期的なのか。それは、特定の店舗に縛られず、「興味・関心」でカテゴリ分けされたギフトカードを贈れる点にあります。
従来のギフトカードは、「Aコーヒーショップで使える券」「B書店で使える券」といったように、利用できるお店が限定されていましたよね。しかし「On Me」のプラットフォームでは、「コーヒー好き向け」「読書好き向け」「アウトドア好き向け」といったテーマでギフトを選べます。受け取った側は、そのテーマに沿った提携店舗の中から、自分の好きなお店を選んで利用できるという仕組みです。
この「贈る側は相手の好みに合わせやすく、受け取る側は選択の自由がある」というモデルが、パーソナライズが重視される現代のニーズにマッチし、大きな期待を集めているわけです。私自身、このニュースに触れたとき、BtoBマーケティングにおける顧客との関係構築に大きなヒントが隠されていると感じました。
このニュースが日本のBtoBマーケターに教えること
「なるほど、面白いサービスだな」で終わらせてはもったいない。この「On Me」の事例は、私たち日本のBtoBマーケティング担当者にとっても、学ぶべき点がたくさんあります。特に重要なのは、「パーソナライズの深化」と「選択の自由」という2つのキーワードです。
「One to One」はここまで来た!パーソナライズの深化
BtoBマーケティングの世界では、顧客一人ひとりに最適化されたアプローチを目指す「One to Oneマーケティング」が理想とされています。しかし、ギフト施策となると、どうでしょうか。ウェビナー参加者全員に同じAmazonギフト券、アンケート回答者に一律でQUOカードPay……。効率を考えると仕方のない面もありますが、どこか画一的で、「その他大勢」として扱われている印象を与えかねません。
「On Me」の考え方は、ここに一石を投じます。「〇〇社の田中部長は、コーヒーがお好きだと伺ったので」というレベルの、より人間的で温かみのあるパーソナライズを可能にするのです。
これは、単にギフトを送るだけの話ではありません。MAツールでセグメントを切ってメールを送り分けるのと同じように、「私たちはあなたのことを一人の個人として理解し、大切に思っていますよ」というメッセージを伝える高度なコミュニケーション施策と言えるでしょう。
“嬉しいおせっかい”を避ける「選択の自由」という気遣い
もう一つの重要な視点が、「選択の自由」です。良かれと思って特定のコーヒーショップのギフトカードを贈っても、相手がそのお店の近くに住んでいなかったり、そもそも別のチェーン店がお気に入りだったりする可能性は十分にありますよね。これでは、せっかくの気遣いが“嬉しいおせっかい”になりかねません。
「On Me」のモデルは、「コーヒーが好き」という大きな方向性だけを示し、最終的な選択は相手に委ねるという絶妙な距離感を保っています。この「相手に選んでもらう」という体験は、満足度を大きく向上させます。
これは、Webサイトのコンテンツ設計にも通じる話です。一方的に情報を押し付けるのではなく、複数の選択肢(導入事例、ホワイトペーパー、製品動画など)を用意し、顧客が自分の興味に応じてコンテンツを選べるようにする。顧客に主導権を渡すことが、結果的にエンゲージメントを高めるのです。
BtoBマーケティング施策への具体的な応用アイデア
では、この考え方を日々の業務にどう活かせばよいでしょうか。いくつか具体的なシーンを想定してみました。
ウェビナー・展示会後のフォローアップに
参加後アンケートに、「業務以外で関心のあること」といった少しパーソナルな質問項目を加えてみるのはどうでしょうか。「読書」「カフェ巡り」「スポーツ観戦」といった選択肢を用意し、回答に応じて最適なカテゴリのギフトをお礼として送るのです。他社からの画一的なお礼メールが並ぶ中、こうしたパーソナルな気遣いは、間違いなく相手の記憶に残ります。
ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の武器として
絶対に攻略したいターゲット企業のキーパーソン。そんな相手へのアプローチにも、この手法は有効です。事前にSNSや過去の会話から相手の趣味や嗜好をリサーチし、「先日、ゴルフがお好きだと伺いましたので」と一言添えて、ゴルフ用品店などで使えるギフトを贈る。単なる製品紹介のメールよりも、人間的な関係を築くきっかけになり、商談への扉が開きやすくなるかもしれません。
既存顧客との関係維持(リテンション)に
ギフト施策は、新規顧客獲得のためだけのものではありません。契約更新のお礼や、導入事例への協力依頼、日頃の感謝を伝える際にも活用できます。「いつも手厚いサポートをありがとうございます」という感謝の気持ちを、相手の好みに合わせたギフトという形で伝えることで、LTV(顧客生涯価値)の向上にも繋がっていくはずです。
まとめ:ギフトは、顧客を深く知るためのコミュニケーションツール
今回は、海外の新しいギフトサービスの事例から、BtoBマーケティングのヒントを探ってみました。「On Me」の挑戦は、単なるギフト業界の変革に留まりません。それは、BtoBの世界においても、企業と企業の関係の根底にあるのは、人と人との繋がりであることを改めて思い出させてくれます。
私たちが送るべきなのは、単なる「モノ」や「金券」ではなく、「あなたのことを想っています」というメッセージなのかもしれません。皆さんもこの機会に、自社のギフト施策が単なる「バラマキ」になっていないか、一度見直してみてはいかがでしょうか。そこから、顧客との新しい関係が始まるかもしれません。

コメント