フォートナイト訴訟に学ぶ、プラットフォーム依存の罠と脱却法

人気ゲーム『フォートナイト』を巡るApple、Googleとの争いに新たな動きです。一見、BtoBとは無関係に見えるこのニュース、実はプラットフォームに依存する全てのマーケターにとって重要な教訓が隠されています。

巨大プラットフォームを巡る攻防、最新動向をおさらい

まずは、今回報じられたニュースのポイントを簡単におさらいしましょう。人気ゲーム「フォートナイト」を開発・運営するEpic Gamesは、アプリストアの手数料(通称:Apple税、Google税)を巡って、AppleとGoogleという巨大プラットフォーマーを相手に長年、法廷闘争を繰り広げてきました。

今回の動きは、その戦いにおける2つの対照的な進展です。

  • 【進展1】米国では、フォートナイトがGoogle Playストアに復帰。
  • 【後退1】一方で、iOS(Appleのプラットフォーム)では、開発者に有利ないくつかの変更が、別の裁判所の判断によって覆される可能性が出てきた。

つまり、プラットフォームによって状況は一進一退。Epic Gamesのような巨大企業でさえ、プラットフォーマーの規約や司法判断にビジネスが大きく左右されるという現実が、改めて浮き彫りになった格好です。ゲーム業界の話かと見過ごしてしまいそうですが、私はこのニュースにBtoBマーケティングにおける重要な示唆を感じずにはいられませんでした。

なぜこのニュースがBtoBマーケターに関係あるのか?

「うちはゲーム会社じゃないし」「アプリも作ってないし」…そう思われた方も多いかもしれません。しかし、あなたの会社のリード獲得や売上は、特定のプラットフォームに大きく依存していないでしょうか?

属人化ならぬ「プラットフォーム人化」のリスク

BtoBマーケティングの世界に置き換えてみましょう。私たちの多くは、日々の業務で何らかの巨大プラットフォームの「土地」を借りてビジネスをしています。

  • Google:SEO対策やリスティング広告で集客の大半を頼っている。
  • Meta(Facebook/Instagram):SNS広告やコミュニティ運営の主戦場になっている。
  • Salesforce / Microsoftなど:彼らのマーケットプレイスやエコシステムの中で自社SaaSを提供している。

これらのプラットフォームは、絶大な集客力や利便性をもたらしてくれる強力なパートナーです。しかし、その力に頼り切ってしまうことは、「プラットフォーム人化」とも呼べる深刻なリスクを抱えることになります。Googleのコアアルゴリズムアップデート一つで、昨日まで1位だった記事が検索圏外に飛び、リード数が激減した…なんて経験、身に覚えのある方もいるのではないでしょうか。Epic Gamesが直面しているのは、まさにこのリスクの究極的な形なのです。

「借り物の土地」から「自分の土地」へ

プラットフォームは、いわば「借り物の土地」です。土地の所有者(プラットフォーマー)がルールを変えれば、私たちはそれに従うしかありません。ある日突然、「来月から賃料(手数料)を上げます」「この土地ではこういう商売(コンテンツ)は禁止です」と言われれば、なすすべなく立ち退きを迫られる可能性すらあります。

だからこそ、私たちが今一度注力すべきなのが、「自分の土地」を育てることです。BtoBマーケティングにおける「自分の土地」とは、オウンドメディア(自社ブログやウェブサイト)、メルマガリスト、自社開催のウェビナーやコミュニティなどを指します。これらは、プラットフォームの気まぐれなルール変更に左右されず、自分たちの裁量で顧客と直接、継続的な関係を築くことができる貴重な資産です。

私たちが今からできる3つのこと

では、プラットフォームの恩恵を受けつつも、依存しすぎない健全な状態を築くために、私たちは具体的に何をすべきでしょうか。3つのアクションプランを提案します。

1. チャネルポートフォリオの見直し

まずは現状把握から。自社のリード獲得や売上が、どのチャネルからどれくらいの割合で生まれているのかを可視化してみましょう。「もしGoogleからの流入が半分になったら?」「もし主要な広告媒体のCPAが2倍になったら?」といったシナリオを想定し、事業へのインパクトをシミュレーションしてみてください。依存度の高いチャネルが明らかになれば、どこを補強すべきか、次の一手が見えてきます。

2. オウンドメディアへの再投資

短期的な成果を追い求めると、どうしても広告など即効性のある施策に目が行きがちです。しかし、フォートナイトの事例は、中長期的な安定性がいかに重要かを教えてくれます。これまで後回しにしていたブログ記事の拡充、ホワイトペーパーや導入事例などのコンテンツ作成、メルマガ配信の強化など、「自分の土地」を肥沃にするための投資を、今こそ再評価すべきではないでしょうか。すぐに結果は出なくとも、着実に育ったコンテンツ資産は、未来のビジネスを支える揺るぎない土台となります。

3. 業界の規制やルール変更へのアンテナを張る

今回のEpic Gamesの闘争も、根底には独占禁止法などの法的な論点があります。私たちBtoBマーケターも、自社が利用するプラットフォームの利用規約の変更はもちろん、個人情報保護法やCookie規制といった国内外の法規制の動向に、もっと敏感になるべきです。こうした外部環境の変化は、ある日突然、マーケティングのゲームのルールそのものを変えてしまいます。アンテナを高く張り、変化の兆候をいち早く察知することが、これからのマーケターに求められる重要なスキルと言えるでしょう。

Epic Gamesと巨大プラットフォーマーの戦いは、まだ道半ばです。しかし、この壮大な物語は、BtoC/BtoBの垣根を越え、デジタル上でビジネスを行う全ての企業にとって重要な示唆を与えてくれます。彼らの戦いを対岸の火事とせず、自社のマーケティング戦略をより強く、しなやかなものへと進化させるきっかけにしていきましょう。

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