World Appがスーパーアプリ化。BtoBマーケの未来はどうなる?

先日、海外テックメディアで「World App」が暗号資産決済やチャット機能を統合し、スーパーアプリ化するというニュースが報じられました。一見、BtoCユーザー向けの話に聞こえますが、実は日本のBtoBマーケティングの未来を考える上で、無視できない変化の兆しが隠されています。

話題の「World App」がスーパーアプリへ進化

こんにちは!BtoBマーケティング専門ブログの編集部です。
先日、TechCrunchがある興味深いニュースを報じました。虹彩認証で話題を集めた「World App」が、暗号資産決済やエンドツーエンドで暗号化されたチャット機能などを統合し、いわゆる「スーパーアプリ」として本格的に始動するというのです。

スーパーアプリと聞くと、日本ではLINEやPayPay、海外では中国のWeChatなどが思い浮かびますよね。メッセージング、決済、EC、行政サービスまで、一つのアプリで日常生活のあらゆるシーンをカバーするプラットフォームのことです。

今回のニュースのポイントは、単なる機能追加ではありません。World Appを開発するTools for Humanity社が目指す「本物の人間によるネットワーク(real human network)」の経済圏を、本格的に拡大させるという強い意志の表れだと私は見ています。これまでWorld IDという「デジタル身分証明」の側面が強かったアプリが、いよいよ実用的なプラットフォームへと舵を切った、というわけです。

なぜ、このニュースがBtoBマーケターに関係あるのか?

「なるほど、でもそれってコンシューマー向けアプリの話でしょ?」
そう思われた方も多いかもしれません。しかし、この動きは3つの点で、今後のBtoBマーケティングに大きな影響を与える可能性があると私は考えています。

1. 「人間証明」がマーケティングの常識を変える

これが最もインパクトの大きい変化かもしれません。
World Appの根幹にあるのは、「World ID」、つまり「このアカウントの向こう側にいるのは、重複のない、本物の人間である」という証明です。

BtoBマーケティングの世界では、長年「ボット」による不正クリックや、フォームへのスパム送信、ウェビナーへの偽の申し込みといった問題に悩まされてきました。これらは広告費を無駄にし、営業担当者の工数を奪い、正確なデータ分析を妨げる厄介な存在です。
しかし、もし「World IDで認証されたユーザーのみアクセス可能」なホワイトペーパーやウェビナーが登場したらどうでしょうか?

リードの「質」は劇的に向上し、無駄なコストや工数を大幅に削減できるはずです。広告配信においても、ボットを除外した「本物の人間」にだけリーチできれば、広告ROIは大きく改善するでしょう。これは、マーケティングの費用対効果を根底から覆すポテンシャルを秘めています。

2. 新たな巨大プラットフォームの誕生

スーパーアプリは、巨大な経済圏とユーザー基盤を形成します。かつて多くのBtoB企業がFacebookページやLINE公式アカウントを開設したように、将来、World App上にビジネスアカウントを開設し、見込み顧客とコミュニケーションを取るのが当たり前になる未来も考えられます。

特に、このアプリが搭載する「暗号化チャット」は重要です。プライバシー保護意識が高まる中、セキュリティが担保された環境で顧客と1to1の対話ができるチャネルは、エンタープライズ向けの商材を扱う企業にとって非常に魅力的です。製品に関する技術的な相談や、見積もりのやり取りなど、機密性の高いコミュニケーションの場として活用されるかもしれません。

今はまだ黎明期ですが、新たなプラットフォームが登場する際は、常に先行者利益が存在します。いち早くその特性を理解し、活用方法を模索し始めることが、数年後の競争優位につながるのではないでしょうか。

3. Web3型決済がもたらす取引の可能性

World Appに搭載される「暗号資産決済」も無視できません。
現状、日本のBtoB取引で暗号資産が使われるケースは稀ですが、グローバルな取引、特に小ロットのデジタルコンテンツやSaaSの決済において、この流れは加速する可能性があります。

法定通貨での海外送金は、手数料が高く、時間もかかります。暗号資産決済が普及すれば、こうした摩擦が解消され、よりスムーズでスピーディなグローバル取引が実現するかもしれません。例えば、海外のフリーランサーへの報酬支払い、海外企業向けのAPI利用料の支払いなどが、より簡単になるイメージです。

BtoBマーケターとしては、決済手段の多様化も顧客体験の一部と捉え、将来の選択肢としてアンテナを張っておく必要があるでしょう。

まとめ:未来のマーケティングに向けて、今できること

今回は、World Appのスーパーアプリ化というニュースを起点に、BtoBマーケティングの未来について考察してみました。
もちろん、これらの変化が明日すぐに訪れるわけではありません。日本での法整備や、社会的な受容度など、乗り越えるべきハードルは数多くあります。

しかし、重要なのは「こういう未来が来るかもしれない」という視点を持ち、技術トレンドを追いかけ続けることです。私たちマーケターは、常に半歩先の未来を想像し、準備しておく必要があります。

今すぐできることとして、まずは自社のマーケティング活動において「ボットやスパムによって、どれくらいの損失が出ているか?」を試算してみるのも良いかもしれません。そうすることで、「人間証明」という技術が持つ価値を、より具体的に実感できるはずです。
この変化の波を、脅威ではなくチャンスと捉え、自社の成長につなげていきましょう。

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