「そろそろスプレッドシート管理も限界だし、MAを入れよう」。そう思って調べ始めると、BowNow、HubSpot、Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)、Adobe Marketo Engage、List Finder、SATORI、Kairos3 Marketing、b→dashなど、似たようなツールが大量に出てきて、正直どれを選べばいいのか分からなくなりませんか。
どれも「マーケティング効率化」「売上アップ」と書いてあるので、見分けがつきにくい。結局、「有名そうだから」「安そうだから」という理由だけで選んでしまいがちです。
でも、MAツールは一度入れるとそう簡単には乗り換えられない、マーケティングの土台になるツールです。最初の比較や検討をどれだけ丁寧にやるかで、数年単位のマーケティング生産性が変わってきます。
今回は、どんなタイプのMAがあるのか、代表的なサービスには何があるのか、どんな比較軸で見ればよいのか、そして自社に合うツールをどう選べばいいのかという観点で整理してみたいと思います。
そもそもMAツールって何?CRMとの違い
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、見込み顧客の行動を記録したり、スコアリングで熱いリードを見つけたり、メールやWeb接客を自動配信したりといった仕組みで、商談になる前の顧客を育てるためのツールです。
CRMが顧客情報の台帳だとすると、MAはそこにどうアクションするかを自動化するエンジン、というイメージですね。
最近は、BowNow、HubSpot Marketing Hub、Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)、Adobe Marketo Engage、List Finder、SATORI、Kairos3 Marketing、b→dashといったMAツールが日本でもよく比較対象になっています。
MAツール比較の前に押さえたいポイント
BtoB向きか、BtoC向きか
BtoB向きのMAは、セミナーや資料ダウンロード、フォーム流入などリード単位での育成が中心になります。一方、BtoC向きはECや店舗アプリなど大量の行動データを高速にさばくことが重要です。
たとえば、BowNowやList Finder、Kairos3、SATORIなどはBtoB案件向けMAとして紹介されることが多く、b→dashはCDP(カスタマーデータプラットフォーム)プラスMAとしてBtoC向けにも強いとされています。
リード数とトラフィックの規模
月間の新規リード数、WebサイトのPV数、メール送信通数がどれくらいかで、必要なツールの馬力が変わってきます。
大量トラフィックと多チャネル配信ならMarketo、Marketing Cloud、b→dashなど。中規模からスモールスタートならBowNow、List Finder、Kairos3、SATORI、HubSpotなどが選ばれています。
どこまでオールインワンを求めるか
メール配信だけできればいいのか、Web接客やLINE、SMS、アプリPushまでやりたいのか、CDP(データ統合)まで一気にやりたいのか。
たとえば、HubSpot Marketing HubはMAプラスCRMプラスCMSなど、ハブとして拡張しやすい構成になっています。b→dashはCDPプラスMAプラスBIプラスWeb接客を1つにまとめたオールインワン型として紹介されています。
UIのわかりやすさとサポート
初めての担当者でも使えるUIか、専任コンサルや伴走サポートがあるか、日本語マニュアルやセミナーが充実しているか。
Kairos3 Marketingは初心者でも使いやすい操作性と手厚いサポートが強みとして挙げられていますし、List Finderも専任コンサルの伴走サポートを売りにしています。
料金体系(初期費用プラス月額プラスコンタクト数)
MAは、初期費用の有無、月額固定プラス従量課金、配信対象コンタクト数で料金が変動するなど、料金体系がけっこうバラバラです。
たとえば、HubSpot Marketing Hubは無料プラン、Starter(月額1,800円程度から)、Professional、Enterpriseといった段階制。List Finderは初期費用10万円前後、月額4万円台から、フリープランあり。Kairos3は月額1.6万円からと比較的安価なプランを用意しています。
リード数が増えたときの料金まで見ておくのがポイントです。
主要MAツール8サービスの比較
ここからは、日本でよく名前の挙がる代表的なMAツールを、タイプ別にざっくり比較していきます。
BowNow(ボウナウ)|国産・低価格・BtoB向けの定番MA
国内シェア1位クラスと言われるBtoB向けMAツールです。
特徴は、低価格帯から始められること。名刺リストプラスWeb行動の可視化に強く、機能を絞ったシンプルさで中小企業でも運用しやすいのが魅力です。
向いているのは、BtoB営業で、まずはメール配信プラススコアリングプラス行動ログ可視化を始めたい企業。MA初導入で、運用難易度を上げたくない中小企業にぴったりです。
HubSpot Marketing Hub|無料から始められるグローバルMA
世界的に導入が進んでいるMAとCRMのプラットフォームで、日本でも無料から試せるMAとして知られています。
特徴は、無料プランでメール配信、フォーム、簡易レポートなどを利用可能なこと。有料プランでは、広告連携、高度な自動化、詳細レポートなどを追加できます。Sales Hub(SFA)やService Hub(CS)などと組み合わせて、統合プラットフォーム化しやすいのも大きなメリットです。
向いているのは、将来的にCRMプラスMAプラスCMSを一元化していきたい企業。インバウンドマーケティング(コンテンツ、ブログ、SEO)に力を入れたい。グローバルツールに抵抗がなく、社内に英語情報も読める人がいる環境です。
Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)|Salesforce連携前提のBtoB MA
Salesforce環境との連携を前提にしたBtoB向けMAツールです。
特徴は、Salesforce CRMとの連携で、リードから商談、売上まで一気通貫でトラッキングできること。スコアリングやリードナーチャリングの機能が充実していて、中堅から大企業での導入事例が多いです。
向いているのは、すでにSalesforceを導入済み、もしくは導入予定の企業。BtoBであり、営業体制がある程度整っている。MAにそこそこの予算を投下できる組織です。
Adobe Marketo Engage(マルケト)|大企業向け・高機能MAの代表格
大規模企業向けの本格MAとしてしばしば比較に出てくるツールです。
特徴は、スコアリング、セグメント、シナリオ設計の自由度が高いこと。BtoBとBtoCどちらにも対応できる柔軟な設計で、他のAdobe製品や各種外部ツールとの連携も豊富です。
向いているのは、マーケ組織が複数名おり、本格的にMAを運用していく前提の企業。広告、コンテンツ、CRMなど既存のマーケ基盤が発達している。予算も運用リソースもある中堅から大企業です。
List Finder(リストファインダー)|BtoB特化・ちょうどいい国産MA
BtoB企業向けに必要機能を絞った国産MAツールです。
特徴は、アクセス解析、スコアリング、フォーム作成、メール配信など、BtoBでよく使う機能を厳選していること。フリープランあり、月額4万円台からのプランでスモールスタートしやすい。専任コンサルの伴走サポートが標準で付くプランもあって、はじめてのMAでも迷いにくいです。
向いているのは、インサイドセールスやメールマーケティングを強化したいBtoB企業。国産ツールで、日本語サポートをしっかり受けたい。BowNowより少しリッチにやりたいが、Marketoまではいらない、という層にちょうどいいです。
SATORI(サトリ)|匿名ユーザーのナーチャリングに強いMA
匿名ユーザーのナーチャリングに強みを持つ国産MAツールです。
特徴は、個人情報が取れていない匿名訪問者にもスコアをつけて、適切なタイミングでコンバージョンに誘導するアンノウンマーケティングが得意なこと。1,500社以上の導入実績(公表時点)があって、国内での事例も豊富です。Web行動ログを元にしたポップアップやメール配信などの機能があります。
向いているのは、Webからのリード獲得に力を入れている企業。サイト訪問者の多くがまだフォーム入力していない状況。BtoBとBtoC問わず、匿名ユーザーの育成に課題を感じている組織です。
Kairos3 Marketing(カイロススリー)|初心者に優しい国産MA
初心者でも使いやすいBtoB向け国産MAとして紹介されることが多いツールです。
特徴は、直感的なUIと手厚いサポート、オンラインセミナーなどで運用を後押ししてくれること。月額16,000円からと比較的低価格で、ステップアップしやすい料金体系になっています。マケフリといったノウハウ提供メディアで、実務的な活用事例も学べます。
向いているのは、MAをこれから本格的に回していきたいBtoB企業。担当者1から2名程度で少しずつ運用を学びたい。サポート重視で、伴走してほしい組織です。
b→dash(ビーダッシュ)|CDPプラスMAプラスBIを一体化したオールインワン型
CDP(データ統合基盤)プラスMAプラスBIプラスWeb接客などを1つにまとめたデータマーケティングクラウドです。
特徴は、SQL不要、ノーコードでデータの取込、加工、統合、抽出、活用が可能なこと。メール、LINE、Push通知、SMS配信など複数チャネルを一元管理できます。BtoC企業(EC、アプリ、小売など)の大量データを扱うケースでよく採用されています。
向いているのは、ECやアプリなどで大量の行動データを持っている企業。ツールを分けずに、CDPプラスMAプラスBIを一体で運用したい。マーケチームにある程度の人員がいて、本格的なデータ活用を進めたい組織です。
会社規模・体制別に見るざっくりおすすめパターン
小規模から少人数マーケチーム
まずはメールプラススコアリングプラス行動ログから始めるなら、BowNow、List Finder、Kairos3、HubSpot(無料からStarter)あたりがちょうどいいと思います。
中堅BtoB企業(インサイドセールスあり)
MAプラスSFAプラスCRMをセットで見たいなら、HubSpot Marketing HubプラスSales Hub、Marketing Cloud Account Engagement(Salesforce連携前提)、国産SFAプラスList FinderまたはSATORIといった組み合わせが候補になります。
BtoC・大量データ・多チャネル配信
CDPプラスMAプラスWeb接客まで一体化したいなら、b→dash、Marketo(プラス別CDP)、その他CDPプラスMA連携構成が選択肢になってきます。
自社に合うMAツールを選ぶステップ
ステップ1:マーケの現在地とやりたいことを言語化する
今やっている施策(メルマガ、広告、セミナー、ウェビナーなど)、課題(リード数不足、商談化率が低い、リピートが増えないなど)、1年後にどうなっていたいか(例:月○件のホットリードを営業に渡したい)を整理しましょう。
ステップ2:必須機能とあったら嬉しい機能を分ける
たとえば、必須はメール配信、スコアリング、フォーム、行動ログ。あったら嬉しいのはWeb接客、LINE配信、BIレポート、CDP、といった具合です。
これを決めておくと、BowNow、HubSpot、List Finder、Kairos3、SATORI、b→dashなどを比較するときにブレません。
ステップ3:3から5ツールに絞って比較表をつくる
BtoB寄りかBtoC寄りか、価格帯(初期費用、月額、従量部分)、サポートの有無、連携したい他システムとの相性を軸に、3から5ツールに絞って表にすると、違いがかなり見えやすくなります。
ステップ4:トライアルやデモ環境で実際に触る
多くのMAツールは、無料プラン、無料トライアル、デモ環境を提供しています。HubSpot、List Finder、Kairos3、b→dashなども実際の画面を触れる環境を用意しています。
担当者が1週間触ってみてどう感じたか、シナリオを1本つくるのにどれくらい手間がかかったか、レポート画面が自社のKPIの見方にフィットするかを確認した上で、最後の1から2ツールまで絞るのがおすすめです。
一番有名なMAより自社にちょうどいいMAを選ぶ
MAツール比較で陥りがちなのが、機能が多いほど良さそうに見える、シェアが高いツールに引っ張られる、価格の安さだけで決めてしまう、という3つのワナです。
最終的に見るべきは、自社の顧客数、体制、やりたい施策に対して、どのMAがちょうどいいレベル感かという一点だと思います。
今回は、BtoBとBtoC、規模別の見方、主要8ツール(BowNow、HubSpot、Account Engagement、Marketo、List Finder、SATORI、Kairos3、b→dash)の位置づけ、選定ステップを整理しました。
この記事を叩き台に、自社用の比較表、要件リスト、社内向けの選定メモを作っておくと、導入時の社内説明や、数年後のリプレイス検討にもそのまま再利用できると思います。


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