スプレッドシート+フォーム+メールで営業管理を自動化する全体像

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「営業管理をちゃんとやりたい。でも、高価なSFAやCRMをいきなり入れるのはハードルが高い…」

こういう悩み、よくわかります。実は、スプレッドシートとフォーム、メールを組み合わせることで、できるところまで自動化するやり方があるんです。

ポイントは3つあります。フォームから自動でリード(見込み顧客)を登録すること、ステータス更新をトリガーにリマインド(メールやタスク)を自動で飛ばすこと、ダッシュボードで「経営が見たい数字」を1枚に集約することです。

順番に整理していきましょう。


フォームから自動でリード登録する

スプレッドシートを「営業台帳」として設計する

まずは、1枚のスプレッドシートを「営業台帳(顧客・案件リスト)」として定義します。

最低限入れておきたい代表的な列は、取引先名、担当者名、メールアドレス、電話番号、相談内容や問い合わせ内容、流入チャネル(問い合わせフォーム、セミナー、展示会、紹介など)、ステータス(新規、対応中、提案中、見積送付、受注、失注など)、担当者(社内の営業担当)、次回アクション予定日、メモといったものです。

ここを「すべてのリード情報が入ってくる母艦」にしておくことで、後の自動化や集計が楽になります。

フォームで入力項目を決める(営業側から逆算する)

次に、フォームで集める項目を決めます。

このときの考え方はシンプルで、「営業が提案するときに最低限ほしい情報」と「後から分析するときに使いたい軸」から逆算して必須項目を決めることです。

例えば、必須項目は会社名、担当者名、メールアドレス、問い合わせ種別。任意項目は電話番号、従業員規模、導入予定時期、予算レンジなどです。

項目を増やしすぎると問い合わせ完了率が落ちるので、最初はミニマムで設計し、足りない情報は初回ヒアリングで補うくらいのバランスがおすすめです。

フォーム → スプレッドシートを自動連携する

フォームとスプレッドシートの連携には、主に2パターンあります。オンライン表計算と同じ提供元のフォーム機能を使うパターンと、外部のフォームツールからスプレッドシートへ連携するパターンです。

よくある構成としては、自社サイトの「お問い合わせフォーム」からスプレッドシートの「問い合わせ一覧」シートに自動で1行追加される仕組みや、資料請求フォームから「資料請求リスト」シート、セミナー申込フォームから「セミナー申込リスト」シートに連携する形です。

それぞれのリストを最終的に「営業台帳シート」に集約していくイメージで進めます。

リードIDを振って「同じ会社を何度も作らない」工夫

運用していると、同じ会社が何度も問い合わせることがあります。1回目はお問い合わせフォーム、2回目はウェビナー申し込み、3回目は別サービスで資料請求、といった具合です。

これを全部「別の会社」として扱ってしまうと、案件の全体像がつかめなくなり、フォロー漏れやダブりが発生します。

そこでおすすめなのが、スプレッドシート側で「リードID」や「取引先ID」を自動発番しておくことと、会社名とメールアドレスなどで重複チェックを行うことです。

例えば、関数を使って、同じ会社名が複数回出てきたら色をつける(条件付き書式)、同じメールアドレスの行をまとめて表示する(フィルタや関数)など、重複を早期に検知できる工夫を入れておくと、運用負荷が一気に下がります。


ステータス更新でリマインド(メール・タスク)を飛ばす

フォームから自動でリードが溜まり始めたら、次は「フォロー漏れをなくす仕組み」です。

ステータス設計:営業プロセスを5〜7ステップに分解する

まずはスプレッドシートの「ステータス」列を、営業プロセスの流れに沿って設計します。

例えば、新規リード、初回対応待ち、ヒアリング中、提案・見積送付、受注、失注といった感じです。

細かくしすぎると運用が破綻し、粗すぎると分析ができません。最初は5〜7ステップ程度に収めると運用しやすいです。

条件付き書式で「今週フォローすべき案件」を見える化

自動化の前に、まずは視覚的に分かりやすくするだけでもかなり効果があります。

例えば、ステータスが「新規」かつ「登録から3日以上経過」している場合は行を赤背景にする、次回アクション予定日が「今日」または「過去」の場合は文字を太字とオレンジにする、失注の場合はグレーアウトする、といった設定です。

これだけでも、「何からフォローすればいいか」が一目で分かり、マネージャーが「放置案件」をすぐ検知できる状態を作れます。

ステータス変更をトリガーにメールを自動送信する

さらに一歩進めて、ステータス更新をトリガーに自動メールを送ることもできます。

代表的なパターンとしては、「新規リード」登録時にサンクスメールを自動送信する、「資料送付済み」に更新されたら2日後にフォローメールを自動送信する、「セミナー参加済み」に更新されたらアンケート依頼メールを自動送信する、といったものです。

これは、オンライン表計算とスクリプト機能(例:Apps Script)で実装できます。

イメージとしては、トリガーがスプレッドシートの更新(行が追加されたり、ステータスが変更されたとき)、条件分岐で「ステータス列が〇〇なら」という判定、メール送信で件名や本文のテンプレートに値を差し込む、という流れです。

コードをガッツリ書かなくても、サンプルをベースに少し書き換えるだけで実現できる範囲も多いので、「営業アシスタントの一部をロボット化する」イメージで始めると良いでしょう。

カレンダーやタスクへの登録も自動化する

リマインドはメールだけでなく、カレンダーやタスクにも飛ばすとさらに便利です。

例えば、「次回アクション予定日」が入力されたらカレンダーに予定を自動登録する、「アポ確定」のステータスになったらオンライン会議URL付きの予定を作成する、「要電話」の案件だけをタスク一覧に転記する、といった設定ができます。

ここまで来ると、スプレッドシートを更新するだけでメール、カレンダー、タスクが勝手に連動するという状態になり、「営業がやるべきは顧客対応だけ」という世界に近づいていきます。


ダッシュボード的な集計シートで経営指標を可視化する

フォームとステータスの自動化ができたら、最後は経営層が見るための1枚の「ダッシュボード」を作ります。

営業管理で「必ず見たい数字」を決める

まず、ダッシュボードに載せる指標を絞り込みます。代表例は、期間内の新規リード数、有効商談数(提案中以上の案件)、受注件数・受注金額、受注率(商談数に対する受注の割合)、失注理由の内訳(価格、競合、タイミング、機能不足など)、流入チャネル別の受注件数・受注率といったものです。

全部載せようとすると「結局誰も見ない巨大ダッシュボード」になるので、最初は3〜5個のKPI(重要指標)に絞るのがおすすめです。

「営業台帳シート」と「集計シート」を分ける

次に、構造を整理します。

営業メンバーが日々触るのは「営業台帳シート」、経営層やマネージャーが見るのは「集計シート」「ダッシュボードシート」という役割分担をはっきりさせると、運用が安定します。

集計の作り方としては、ピボットテーブル、QUERY関数、集計用関数(COUNTIF、SUMIF、AVERAGEIFなど)を組み合わせて、営業台帳シートから必要な数字だけを引き出すイメージです。

グラフとスコアカードで「1枚で分かる」ダッシュボードにする

経営層やマネージャー向けには、パッと見で状況が分かる「1枚ダッシュボード」が理想です。

例えば、左上に当月の新規リード数・商談数・受注数をスコアカードで表示し、右上に週次のリード数・商談数・受注数の推移グラフ、左下にチャネル別の受注件数・受注率の棒グラフ、右下にステータス別の案件数(どこで詰まっているか)を棒グラフで表示します。

ここまでできると、「どのチャネルに予算を割くべきか」「どのステージで案件が止まっているか」「誰の案件が積み上がっているか」といった判断がスプレッドシートだけでできるようになります。


スプレッドシート連携の限界と、次の一手

ここまで読むと、「意外とスプレッドシートだけで色々できるじゃん」と思われたかもしれません。実際、小〜中規模のチームであればスプレッドシートとフォーム、メール連携で十分戦えます。

ただし、規模が大きくなると明確な限界も見えてきます。

スプレッドシート運用が限界を迎えるサイン

代表的な「限界サイン」は次のようなものです。行数が増えすぎて表示やフィルタが重い、同時編集する人数が増えて更新競合や上書き事故が起きる、スクリプトが複雑化して誰も中身を理解できなくなる、メールやタスクの自動化ロジックが増えてバグの調査に時間を取られる、「案件ごとの履歴(いつ、誰が、何を話したか)」の管理が苦しくなってきた、といった状況です。

このあたりが見え始めたら、専用ツールの検討タイミングです。

専用ツールへの「いきなりフル移行」を避ける

よくある失敗パターンが、スプレッドシート運用が混乱してきて「もう限界だ」といきなり高機能なSFAやCRMを導入し、入力項目や権限設計が複雑すぎて現場が定着せず、結局使われないという流れです。

おすすめなのは、段階的に役割分担を変えていくやり方です。

例えば、第1ステップではスプレッドシートを「マスタ」、ツールを「一部機能」に使います。メール配信だけ専用のメールマーケティングツールに任せる、名刺管理だけ専用ツールに任せる、といった形です。第2ステップで案件管理や履歴管理を徐々にツール側に移行し、第3ステップで最終的に「リードから案件、売上」まで一元管理します。

このとき、スプレッドシートは「レポートやバックアップ」の役割にスライドしていくのが現実的です。

「スプレッドシート営業管理」はあくまで入口。目的は営業生産性の最大化

最後に、前提をもう一度整理しておきます。

フォームとスプレッドシートでリード管理を自動化することは、とても有効です。ステータス更新とメール、タスク連携を組み合わせると、かなり高機能な簡易SFAになります。ただし、スプレッドシートは「万能ツール」ではなく、規模が増えれば限界は必ず来ます。

本当に大事なのは、「どこまでをスプレッドシートでやるか」「どこからを専用ツールや仕組みで置き換えるか」を、自社のフェーズに合わせて設計し続けることです。


まとめ:今日からできる小さな一歩

この記事の内容を、明日からの実務に落とし込むとしたら、営業台帳となるスプレッドシートの列を整理すること、問い合わせフォームや資料請求フォームからスプレッドシートに自動連携すること、ステータスと次回アクション予定日を運用して条件付き書式でフォロー漏れを見える化すること、最低限の指標(リード数、商談数、受注数)をダッシュボードで可視化することの4つです。

この4つだけでも、「スプレッドシート+フォーム+メール」の営業管理レベルはかなり上がります。

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